カブトムシの生態・飼育の方法

カブトムシ

生息地

本州島以南、台湾島、インドシナ半島、朝鮮半島、中国大陸

特徴

標高1500m以下の山地〜平地の広葉樹林に生息します。日本では江戸時代から農耕利用目的で全国的に育てられてきた落葉樹の二次林に多くいます。

「昆虫の王様」とも呼ばれ、クワガタムシと並び人気の高い昆虫です。体長はオス30-54mm(角を除く)、メス30-52mmほどです。かつては日本最大の甲虫とされていましたが、1983年に沖縄本島でヤンバルテナガコガネが発見され、その座を譲りました。

オスの頭部には大きな角があり、さらに胸部にも小さな角があります。この角は外骨格の一部が発達したもので、餌場やメスの奪い合いの際に使用されています。ただし、角の大きさには個体差があって、体格に比例して連続変化を示しています。また、角は長いほどオス同士の闘争の際に有利になる反面、タヌキやハシブトガラスといった天敵に捕食されるのを避けるには短い方が有利であることが研究で明らかになっています。角の大きさは、幼虫時の栄養状態の優劣と、遺伝により決定されます。クワガタムシの一部の種のような非連続変異やコーカサスオオカブトのような体格に比例しない長短変異は示しません。

カブトムシはおもに広葉樹樹幹の垂直面で活動し、付節先端の爪のみが樹皮上での占位に使用されます。闘争に際しては、専ら相手をテコの原理で樹皮から剥がして投げ飛ばす戦法を用い、執拗な追跡や殺傷は行いません。対照的に東南アジアのコーカサスオオカブトや南米のヘラクレスオオカブト等は、比較的水平に伸びた太枝や大型草本上で活動し、コーカサスオオカブトは闘争においてしばしば他昆虫や交尾を拒否した雌を殺害します。カブトムシの勝敗決定は飼育環境下でも明解です。なお温和なカブトムシの種でも狭い飼育ケース内でのオス同士の格闘では前胸部と中胸部の間に角をこじ入れられ、一瞬にして切断されてしまうことがあるので注意が必要です。

生態

基本的に夜行性で、昼間は樹木の根元、腐植土や枯葉の下などで休み、夕暮れとともに起きだして餌場まで飛んでいく。夜明け前には再び地面に潜り込むが、餌場争いに負けたなど、何らかの理由で夜間餌にありつけなかった場合や産卵期のメス個体は日中でも摂食を続けていることがある。

食性

幼虫は腐植土(腐葉土)を糧とします。生木、腐食の進んでいない枯木は食べません。朽木や枯葉が微生物等の働きで土状にまで分解されたものを好みます。

成虫は口器(小顎)に艶のある褐色の毛が密生していて、これに毛細管現象で樹液を染み込ませ、舐めとるようにしながら吸います。クヌギ、アベマキ、コナラ、ミズナラ、カシ、クリ、地域によってはサイカチやヤナギ、ライラックなどの樹液に集まり、これを吸汁(後食)します。なお樹液場はシロスジカミキリの♀の産卵痕やボクトウガコウモリガの幼虫(近年の研究によると樹液場を齧って継続的に樹液を出させることでほかの小型昆虫を誘き寄せ捕食していることが明らかになっています)などの他の昆虫が樹皮を傷つけることによって形成されます。樹液を餌とする昆虫は他にも数多くいるが、カブトムシはその体格と防御力から、餌場を巡る競争において優位に立つことが多いです。

長く、カブトムシの角や口に木の幹を傷つける能力はなく自力で餌場を作ることができないと考えられてきましたが、近年の研究結果から、毛状の口器の上にあるクリペウスと呼ばれる突起した器官で、モクセイ科のトネリコや、リンゴの木の樹皮を削って樹液を吸汁することがわかっています。トネリコの木は樹皮に少し傷をつけるだけで樹液が出てくる反面、樹液の流れはすぐ止まってしまうため、カブトムシは少しずつ傷を広げながら吸汁する作業を繰り返します。自ら餌場を作るため、トネリコの樹上では餌場をめぐる競争は少ない事が観察されています。

樹液以外に、傷んだり腐りかけたりした果物に集まり汁を舐める習性も知られています。

交尾を終えた雌は、腐植土や堆肥に潜り込み1個ずつ卵を産み付け、卵を覆うように周りの土ごと脚で押し固めます。一度に産卵するのではなく摂食、産卵の行動を数回に亘り繰り返し計20-30個程度産卵します。好条件の飼育環境下では更に多く50個程にもなります。卵は直径2-3mm程度で最初は硬く楕円形をしており、数日経つと直径4-4.5mmほどに丸く膨らみ軟らかくなってきます。色は乳白色からくすんだ薄茶色になります。2週間ほどで孵化します。

幼虫

典型的なジムシ型。孵化直後の幼虫は大きさ7-8mmほどで真っ白ですが、数時間もすると頭部が茶色く色付き硬化します。胴体は柔らかく弾力性に富み、餌を食べる事により膨張していきます。幼虫は腐植土や柔らかい朽木を食べて成長し、ある程度育つと脱皮をします。二齢、三齢とも脱皮直後は孵化と同じく頭部も白く柔らかいです。体色は青みを帯びた透けるような白から二齢幼虫後半頃には黄色がかった不透明な乳白色へと変色します。複眼も単眼も持たず視力を有しませんが、大顎から摩擦音を発することで他の同種幼虫との接触を避けます。気温や餌の状態に影響されるが早いもので孵化から1ヶ月程度で、だいたい晩秋までには終齢である三齢幼虫となり、そのまま越冬します。この時点で体長10cmほどになっています。

冬を過ごした三齢幼虫は4月下旬から6月ごろにかけて体からの分泌液や糞で腐植土中に縦長で楕円形をした蛹室を作り、そこで3回目の脱皮をして蛹となります。蛹室の内壁は、蛹の表皮にダメージを与えることがないよう平滑に仕上げられています。雄の場合は蛹に脱皮する時に頭部に角ができます。蛹ははじめ白いですが、橙色、茶色を経て頭部や脚は黒ずんできます。やがて蛹の殻に割れ目が入り、脚をばたつかせながら殻を破って羽化します。脱け殻は押し潰され原形を留めません。羽化したばかりの成虫の鞘翅はまだ白く柔らかいですが、翅を伸ばしてしばらくたつと黒褐色もしくは赤褐色に色付き硬化します。

成虫

成虫は羽化してから2週間程度は何も食べず土中で過ごした後、初夏の、夜間の気温が20度を上回る日が続くと、夜を待って地上に姿を現します。温暖な地域では5月下旬頃から、涼しい高地では7月初旬と気候により出現する時期に若干ばらつきが見られます。だいたい6月-7月の蒸し暑く風の無い夜に一斉に飛び立ち、野生の成虫は遅くとも9月中には全て死亡します。成虫の形態で越冬することはありませんが、飼育下では12月~翌1月まで生きる例があります。雄の方が活動的でやや短命な傾向にあります。成虫の寿命は1-3ヶ月ほどで、外気温と餌の量に大きく左右されます。気温が低くなると動きが鈍くなり、また自然界では樹木も落葉に向かい樹液が止まるのでこれが影響します。

天敵

幼虫の天敵はコメツキムシツチバチの幼虫、アリなどの昆虫やモグラです。イノシシも堆肥等を掘り返し食べます。他にもカビやウイルスによる病気で死ぬこともありますが、元来丈夫でそれほどデリケートな種ではありません。また、蛹の時に蛹室にミミズが入ってきてしまうと蛹は死んでしまいます。成虫の天敵となる捕食者は、タヌキ、イノシシなど森に棲む動物、カラスやフクロウなどがいます。また致命傷には至りませんが、カブトムシに寄生するダニが知られています。カブトホソトゲダニ、タカラダニの亜種などが該当します。

また、ヒトは、森林開発による伐採や採集による捕獲を行っていることから、幼虫、成虫を問わず最大の天敵であるといえます。

カブトムシの飼育方法

幼虫
卵の周囲にある母虫由来の分泌物が、幼虫の成長に何らかの影響を与える可能性があると考えられていて、卵だけを無闇に産卵位置から動かさないほうがいいですが、たとえ卵だけ移動した場合でも孵化、成長ともに可能です。卵をマットの上に置いての孵化観察も可能ですが、卵の殻は自ら食べて養分とするため、頭部に引っかかっていたとしても人為的に取り除くような事はむしろ望ましくないとされます。

過密状態になると幼虫同士が傷つけ合ったり伝染病が発生するリスクが高まります。孵化や脱皮時は傷つきやすく自力での移動もできないため、卵や幼虫を一箇所にまとめるような事は望ましくありません。幼虫がある程度の大きさに育ったら、より大きなケースを用意するか、個別に分ける必要があります。

マット

幼虫の餌となる腐植土は、ペットショップや昆虫専門店で販売されている専用のマット(育成マット、発酵マット)がそのまま使用でき、簡単で扱いやすいです。このマットは広葉樹の材を粉砕後、発酵熟成させたもので、逆にクワガタムシ専用として売られている発酵の進んでいないチップ状のマットはあまり適さず、菌糸瓶と呼ばれる菌類を人工増殖させた物だけでは成長しません。しかし他のクワガタの食べ終わった菌糸ビンの残りや発酵マットを使うと非常によく育ちます。

園芸用の腐葉土はより安価に用意できる餌ですが、殺虫剤や農薬が含まれていないか確認する必要があります。本来の目的は元肥として使用する保水力と通気性を兼ねた遅効性肥料であるため発酵が完全に進んでいないものも多く、葉形が崩れるようになるまで更に数ヶ月要する場合があります。そのまま使用していても幼虫飼育は可能ですが発酵の進んだ物と比べれば幼虫の成長は鈍いです。また、野外の林床等から採取した腐葉土や朽木(台風の後はよりいい状態のものがあります)や農家の堆肥などを使用する場合、幼虫に害を及ぼす可能性のあるコメツキムシの幼虫やムカデが混ざっていないかを予め確認し、いる場合は取り除いておく必要があります。

適度な湿気が重要で、マットを握って崩れない程度がよいとされており、表面が乾いてきたら霧吹きで定期的に加湿するといいです。マットに加湿する際、水を入れ過ぎると底部に水が溜まって産み落とされた卵が死滅する場合があるので注意が必要です。これは通気性が阻害されると無酸素状態になりやすく、この状態を更に放置しておくと嫌気性細菌の繁殖により発生する有毒ガスがマット内に充満し水難を免れた卵や幼虫にも影響するからです。マットの底が濡れて変色し、ドブまたは硫黄の臭いがする場合がこれに当たる。幼虫がマットの上に出てくる理由は過加湿、乾燥以外にもエサ不足など様々であり、よく観察を続け原因を見極めて適切な対処をすることが重要です。

清掃

糞が多くなったときはマットの追加や交換が必要になります。この際マットが攪拌されることによってカビやキノコの発生を防ぐ事もできます。常に豊富な餌を与えることによって栄養不足による個体の矮小化を防止できます。幼虫時に栄養不足だった個体は総じて小型になり特に雄角の萎縮が顕著です。幼虫の糞は大粒のペレット状で、増えてくると黒い小豆がザラザラとひしめいているような状態になります。マットの交換が必要な時はバクテリア環境の激変を抑える意味でも全部入れ替えずに半分から7割程度を入れ替えるのがよいです。 終齢幼虫になると糞が大きくなるため粒子の細かいマットならば中目のふるいにかけることで糞だけ分離する事ができます。減った分だけマットを足していく事で交換することなく効率の良い飼育が可能になります。幼虫の粒状化した糞は腐植土が更に分解されており、肥料としての利用価値が高いです。

卵の時期(初秋)と蛹の時期(初夏)は非常にデリケートなため触れる事は厳禁です。

飼育容器と温度

幼虫がかじって脱走しない容器なら何でも使えます。ただし、個別に飼育する場合は1リットル程度のビンが、複数で飼育する場合は衣装ケースや大型の飼育ケースが望ましいです。 冬場は凍結に注意しましょう。日本のカブトムシは雪の降る日本の気候に適応してきた種で耐寒能力に優れますが、それでも完全に凍結するような環境は飼育に適しません。逆に冬も常に温暖な環境に置くと早熟する傾向にあり、早春に羽化が始まるなど季節外れの成虫が誕生することがあります。

蛹になる直前の幼虫は柔らかいマットを嫌います。蛹室を作るのに適した場所が無いとマットの上を這い回ります。その場合は底部に黒土を入れるか、もしくはマットを押し詰めておくだけでも効果があります。幼虫が他の蛹室を壊さないよう、なるべく過密飼育を避けましょう。

蛹室は一部なら壊しても問題ありません。ただし蛹室内に周囲のマットが落ちると羽化不全を起こす確率が高まるので注意が必要です。なお蛹室を完全に壊してしまった場合はマットに蛹室の代わりとなる縦長の窪みを作り、そこに蛹を立てて入れておくかオアシスに縦穴を掘ったものか市販の国産カブトムシ専用の人工蛹室を用意する必要がありますが、自作する場合は必ず縦向きにすることと蛹にあったサイズのものにする必要があります。ただし蛹化直後や羽化直後は非常にデリケートなので注意が必要です。 なお、蛹はオオクワガタ♀やチビクワガタの餌として与えられることもあります。

※蛹室(ようしつ)

蛹室とは幼虫が蛹になるために不要な排泄物を用い壁を作って作る空間を指しましょう。 この空間で幼虫→前蛹→蛹→成虫と変態します。また、カブトムシ亜科に属する多くの種類は横長の蛹室を作るのに対し(蛹は蛹室内で横たわる姿勢をとります)、日本産カブトムシは縦長の蛹室を作り(蛹は蛹室内で腹端を下に直立する姿勢をとります)世界的に見ても稀な習性を持つ種類です。

※前蛹(ぜんよう)

幼虫が蛹になる前の形態(状態)を指します。 普段C字型に丸まっている幼虫が蛹室完成後 I 字型に真っ直ぐ伸び、表皮に皺が寄ります。 この幼虫の皮下で蛹に変態して幼虫時の硬い頭皮を割って脱皮して蛹化します。 蛹化直後は柔らかくオスは体を揺さぶり体内の体液をポンプのように押し出し角を伸ばします。 この時にショックを与えると角を伸ばさなくなったり、そのまま壊死してしまう事があるので取り扱いには細心の注意を要します。 表皮が固まっていれば前蛹でも蛹でも人工蛹室に移しても構いません。

成虫

カブトムシ成虫の寝床となるマットは、腐植土や前述の市販マット等が良いですが、成虫飼育の目的が繁殖ではなく観賞ならばダニの付着やコバエの発生防止のために防虫効果のある針葉樹マットでもよく、厚さも2-3cmで構いません。

直射日光の当たらない、気温25度程度、35度以下の通気性の良い場所で飼育しましょう。逃げ出さないよう蓋がしっかりと閉まる飼育ケースを用意し、発泡スチロールでは穴を開けられる恐れがあるので望ましくありません。幼虫と同様、霧吹き等で定期的にマットに水をやります。また、転倒した成虫は足掛かりがないとなかなか起き上がる事ができないので、無駄な体力の消耗を避ける意味でも掴まって起きあがるための枯葉、小枝、止まり木などを満遍なく敷いておくと良いでしょう。

他の雄や昆虫と戦わせることは、非常にストレスを与えるため、長期間飼育したい場合には向きません。愛好家の中には、昆虫の格闘大会出場のために前もって格闘を重ね修行を積むことにより更に強い個体になると信じている人や、断食させると強くなるという人がいますが、昆虫への闘争心向上に影響するかは不明です。

自然界では樹液が成虫の主な餌ですが、家庭では市販の昆虫ゼリー、または果物のリンゴやバナナ等が用いられることが多いです。但し、スイカやメロンや砂糖水は栄養価が低くて不向きです(これらを与えると下痢をするという説もあります)。なお昆虫ゼリーは甲虫類専用飼料として昆虫ミツよりマットを汚しにくく扱いやすい事から主流になりましたが、砂糖水と色素のみからなる粗悪品もあるので注意が必要です。

雌雄ともかなりの大食いであり、餌を切らさない様に給餌すると活発に活動し、長生きし、結果的に産卵数も増えます。但し気温と湿度が高く腐敗しやすい状況なので不衛生にならないようにする必要があります。

殖やし方

容器に雄と雌を数匹入れて交尾させます。産卵には市販されている昆虫マットか腐葉土がいいです。容器に少しずつマットを入れながら底面を強く押し固めたものを産卵床としますが、上の方は強く詰めなくてもよいです。全体の深さは15-20cmくらいあれば十分です。

国産カブトムシの交尾から産卵に至る過程は非常に容易で、餌とマットが揃っていれば特別な事は何も要らず、後はただ脅かさないようにそっと見守っているだけでOKです。交尾の後、雌は容器底部付近まで潜り産卵します。成虫は産卵を2度、3度と数回に分けて繰り返すのでケースが小さかったり複数飼育をすると前に産卵した卵を傷つけることがあるためたくさん確保したいなら雌の産卵後、もしくは飼育ケース内に直径2-3mm程度の白い卵が発見されたら、成虫を別のケースへ移しましょう。

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