クツワムシの生態

クツワムシ

生息地

本州(茨城県-新潟県以南)、淡路島、四国、九州、隠岐、対馬、朝鮮半島。

特徴

大型で体高が高く、ずんぐりとしたその体の側面積は日本のキリギリス亜目中最大(体長ではカヤキリの方が遥かに上回ります)。また、肉食性が強い同亜目にあって、草食、しかもほぼクズの単食という食性は異色といえます。

メスはオスよりも翅が細長く、体が巨大であることを除けば、ツユムシやクダマキモドキにやや似ますが、産卵管は剣状です。

体色は個体変異が大きく、緑色の個体と褐色の個体があります。保護色と考えられますが、両者は同所的に混在し、生息フィールドごとに同じ色の個体群が安定して棲んでいるわけではありません。

生態

夜行性。開けた場所をあまり好まず林縁の下草に棲みます。マメ科植物、とりわけクズの葉を好んで食べ、生息地もクズの繁茂している場所である場合が多いです。肉食もしますが、クズの葉だけでも問題なく生育します。これはマメ科植物がタンパク質を多く含むためだといわれています。

マメ科以外にもカラスウリやアマチャヅル、アレチウリなどのウリ科、ヤブカラシ、ヘクソカズラなど種々の蔓植物を食べるのが目撃されています。

また、ツユクサやメヒシバなど一部の単子葉植物も食べます。

羽化した成虫は早い個体では7月下旬より出現し、野生で声が聞かれるのは10月いっぱいまでです。一方、飼育下で餌や容器、温度など良好な環境を整えてやると、年を越して最長2月まで生きることもあります。

メスは土中に産卵します。幼虫は産卵翌年の4月下旬〜6月上旬に孵化します。体が重く、かつ脚が非常に長いため、終齢近くになるにつれ脱皮に失敗する個体が多くなります。また、一般的に直翅目の幼虫期間は2ヵ月程度ですが、クツワムシは成長がやや遅く、孵化から羽化までに3ヵ月前後かかることもあります。

大型で人間を含む天敵に対し姿が目立つうえ動きが鈍く、飛翔能力も乏しいです。生息地もクズの群落に限られます。このためクツワムシは環境破壊に弱く、各地で減少と個体群毎の絶滅が進み、また一旦破壊された環境がその後回復しても他地からの個体群の回帰がなかなか進みません。

クツワムシの飼育

野生下ではほぼクズの葉専食ですが、飼育下では様々な野菜や人工飼料も食べます。特に、イヌ、ネコ、キンギョ等用の乾燥飼料はたいへんよく食べます。(人工飼料は老化を早めたり奇形個体になるなどの報告もあります)腐敗した餌や汚れた飲み水、澱んだ空気には弱いです。キリギリス科随一の草食者である彼らは積極的殺傷行為、共食い行動はしませんが、相応の縄張り意識を持っているため、容積の限られた飼育容器内ではしばしば突発的に取っ組み合いのケンカを起こし、ただでさえ脆い脚がたやすく取れてしまいます。また、1本でも脚を失った個体はその分動きが鈍くなり、他の健康な個体から寄ってたかって虐待され、残っている脚をさらに次々と失いダルマ状態になってしまいます。このため飼育下で長生きを望むのであれば、単独飼育が無難です。

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